中国でよくある不正の実情や中国のビジネス事情について国際経験豊富な有限会社ナレッジネットワークの公認会計士、中田清穂氏に寄稿いただきました。

今回は中国現地法人で最も多い不正方法の一つでもある仕入先を経由した不正について。それぞれ異なる方法と巧妙な仕組みで不正の方法を実際にあった事例を元にケース別にご紹介しています。

中国で横行する仕入先を使った購買不正

中国の仕入先を経由した不正事例として「仕入先業者からのキックバック」は有名な方法ですが、これ以外にも仕入先を使った不正方法があります。

それは「自社スタッフ等の関係者が立ち上げた仕入先」を使った購入不正です。実際にあった事例を元にご紹介したいと思います。

ケース1:購買部責任者が親族企業を使った利益の共有

企業の購買部責任者は一定の権限を持つため仕入先業者を選定する事が可能な場合があります。そのため購買責任者の親族が「親族名義」の会社を立ち上げ、仕入先として関わる場合があります。

相見積もりを取らず決済を進める、または相見積もり情報を元に同等の値段設定の見積りを提出し、その他の支払い条件は相見積もり先と同等または良い条件を契約上は記載しておき、契約後は購買責任者の権限を使い、他社相見積もり先と同じにする等の方法を使い親族業者へ仕事を卸す方法です。

この場合は必ず相見積もりを日系企業に依頼して取得する。

現在利用している業者について価格面以外についてどんなメリットがあり利用しているのかを購買担当者以外に確認し裏取りを行う点が重要です。

購買担当者以外という点は、購買部責任者の目を気にして購買部スタッフから情報収集が難しい場合があるため、購入した製品を納品する立場にある営業スタッフなどに対して、利用中の仕入先の対応の良し悪しを確認する等の確認が求められるためです。

ケース2:企画部責任者による自分名義企業を通した仕入れ

企画部責任者が展示会などの装飾や施工、企業アピールで利用するノベルティグッズ発注に関する仕入先業者を自分名義の会社を立ち上げ、仕入先として利用します。

この場合も責任者の立場を利用して仕入先を指定する方法ですが、展示会の装飾や施工は型番などが無くクオリティに関係するため相見積もりをとっても判断が難しい部分があり、購買部側からすると価格だけで判断が難しい点があり、不正が見つけにくい点があげられます。

実際にあった話ですが最初の頃は日本人責任者が価格確認をしていた所、中国人責任者が信用を得たあと日本人によるチェックが入らなくなったのを気に、自分名義のペーパー会社を立ち上げ。

業務上は装飾など依頼する業者とは打ち合わせを行うのですが、契約条件として商流に自分名義の会社を通す点を業者へ依頼します。

日本本部の仕事として財務の金額のチェックは大切な仕事の一つなのですが、基本的には中国子会社側が責任を持って対応ができる部分です。

そのため日本本部は定期的に仕入先業者情報を入手して、第三者機関に仕入先情報を提供して中国子会社スタッフと同じ名前の代表者の仕入先が無いか等の調査を行う必要があります。

仕入先の調査を現地財務部や購買部に依頼せずに第三者機関に依頼する理由は、会社の組織ぐるみで利益共有をしている場合もあるためです。

現在は中国で登記された企業情報は調査機関を使うことで、日本と同じように取引先企業の洗い出しが可能となっていますので、日本からでも調査機関を探し依頼するのは比較的カンタンです。

中国人スタッフは「日本本部の財務部」は中国語が分からず、不正をしても分からないと高をくくっている場合があります。

また不正開始時は、不正額が少ないものの金額に慣れると徐々に不正額が多くなる傾向も高いため、今まで財務チェックに掛けていた時間を出来る限り短縮化し、短縮化した時間を使い会社の信用や屋台骨を揺るがしかねない不正取引に関する確認を始める取り組みが必要です。

会計連携ソフト「看看」で決算の早期化を

中国財務会計連携ソフト「看看」を使うと「連結決算の早期化」が可能です。また「仕入先情報」の取得も「看看」を通じて行えますので、現地スタッフに知られず調査を遂行することが可能です。

自社不正があるのではとお考えの企業様、または今までそのようなチェックをしていなかった企業様、「看看」を導入してより厳密な中国法人の審査を行って頂ければと思います。

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