中国でよくある不正の実情や中国のビジネス事情について国際経験豊富な有限会社ナレッジネットワークの公認会計士、中田清穂氏に寄稿いただきました。

日本人駐在員が中国で生活をする場合は、一般的に企業が契約している不動産業者を通じて賃貸を行い居住しますが、日本の経理部の方はこの不動産賃貸が不正の温床となっているのをご存知でしょうか?

日本側の会計監査は数字の確認だけでなく、本来はこのような賃貸物件を介して企業資金の不正流用などに目を光らせる必要があります。そんな不動産賃貸に関する不正の事例をご紹介します。

中国人の業務部と不動産会社の結託による不正その1

業務部スタッフが懇意にする不動産会社の物件を水増しして駐在員に紹介。水増しした費用分が業務部スタッフの取り分として、不動産会社から毎月紹介料として業務部スタッフへ資金提供が行われます。

日本人スタッフは定期的に入れ替わるため、不動産業者と業務部との関係など、一切関係が分かりません。そのため業務部責任者は、日本人の分からない所で、このような不正に手を染めている場合があります。

中国人の業務部と不動産会社の結託による不正その2

業務部スタッフが所有する物件を不動産会社に紹介。特定の物件のみを駐在員に紹介する形で所有する物件を賃貸させ、会社の資金を所有物件のローンの支払いなどに充てます。

不動産会社側は仲介料が入るので通常業務と変わりませんし、業務部の指示に従わない場合は、次回以降の紹介を業務部より外される可能性もあり、従うしか無いのです。

所定の不動産業者でない場合は不正が行われないのか?実情はそうとも言えないのが問題点です。その理由は中国人以外にも日本人による不正が行われているのからです。

日本人駐在員による不正その1

先ほどご紹介した中国人による不正2と同じように日本人駐在員も不動産会社と交渉し結託。不動産会社経由で割増した家賃を会社側に請求し、割増分の差額を「ピンはね」している場合もあります。毎月数万円の事ですが、5年程度の駐在となると300万以上の現金を不正に懐に入れるのです。

日本人駐在員による不正その2

駐在期間に現地の中国人と結婚して中国人の名義で不動産を購入した物件に住居。もしくは元々結婚しており中国人側が自分名義の不動産を所有しており住居。

このように不動産を中国人名義で所有している場合は、自分名義の不動産を賃貸物件として不動産会社などを経由し会社に賃貸費用として請求。そこで得た賃借代金をローン払いに充て会社に負担させる日本人もいます。

ローン支払いを会社が立て替え、資産としては駐在員夫婦の手元に残る行為となり、私用で購入した物件のローンを会社に対して費用請求する行為を不正とみなすのか、賃貸としてみなすのかは会社によって判断が分かれることです。

ただし月30万前後の賃貸代金を会社が肩代わりした場合、5年間で1800万円の現金が個人資産となり、個人ローンの肩代わりを会社資金で流用しているのです。

日本側の財務部門が本来行うべき管理事項とは日本側財務部門は財務データの確認作業がメインとなり、このような海外部署の不正行為にまで時間を割けないのが実情です。

ですが日ごろ利用されている不動産会社が固定された会社の利用になっていないか、現地の平均的な物件価格帯と比べて割高感がないか、賃貸用発票の名義が個人名になっておりスタッフや親族の名義となっていないか等、現地不動産会社と結託をしている中国の財務部や業務部の実情把握、中国人と結婚している日本人駐在員の中国人の親族の情報など、日本側経理部に隠そうとしている部分の洗い出しを行う事が必要です。

さいごに

不正額が多額になればなるほど、明るみになった際の会社に対する社会のイメージに大きく影響しますし、中国側は資金流用が日本側に分からないと判断すると不正を助長する結果を招きます。

日本側から中国の実データを確認する環境を「看看」で構築すれば、今回ご紹介した不正の温床が広がる前に、日本側より定期的なチェックの実施と、今まで踏み込んでいない部分の確認ができるよう作業効率を高められ、細部に渡るチェック体制の構築を整える事が可能です。

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